Step 3 — On-site Sealing
出張封印(丁種封印)の実務
車を運輸支局へ持ち込まずに、店舗や自宅の駐車場でナンバー交換と封印を完結させる制度です。販売店にとっては納車準備の切り札、行政書士にとっては専門性の証明になる業務。しくみ・要件・実務フロー・注意点までを一気に解説します。
封印とは何か
封印とは、登録自動車(普通車など)の後面ナンバープレート左側の取付ボルトに被せるアルミ製のキャップのこと。表面には管轄運輸支局を表す文字が刻印されています。役割は2つです。
- 公証 — 運輸支局で正規の登録・検査を受けた自動車であることの証明
- 防犯 — ナンバープレートの取外し・盗難、車両盗難の防止
根拠は道路運送車両法第11条。封印のない登録自動車は運行できず、正当な理由なく封印を取り外すことは禁止されています(罰則あり。整備等やむを得ない事由がある場合の取外しは例外的に認められます)。
軽自動車・二輪車には封印制度がありません。だからこそ軽はナンバー交換に車両持込みが不要で、逆に登録車は「封印をどこで付けるか」が段取りの分かれ目になります。
誰が取り付けられるのか(甲・乙・丙・丁の4区分)
封印は、国土交通大臣(運輸支局)または道路運送車両法第28条の3の委託を受けた「封印取付受託者」しか取り付けられません。受託者は事業形態・委託範囲により4つに区分されます。
| 区分 | 受託者 | 主な封印対象 |
|---|---|---|
| 甲種 | ナンバープレートの交付代行者(運輸支局に隣接する標板協会・ナンバーセンター等) | 全ての登録手続(場所は運輸支局構内の封印場所) |
| 乙種 | 完成検査終了証のある自動車の販売業者(自販連加盟の新車ディーラー等) | 自ら販売する自動車 |
| 丙種 | 日本中古自動車販売協会連合会(JU)の会員である中古車販売業者を構成員とする団体 | 構成員が販売する自動車 |
| 丁種 | 各都道府県の行政書士会 | 乙種・丙種の範囲を除き広く対応(個人売買、住所変更、番号変更、再封印 等) |
※通常の窓口手続では、支局構内で甲種(交付代行者)が封印を取り付けます。この「支局に車を持ち込む」前提を崩せるのが、次の丁種のしくみです。
丁種封印の仕組み(委託 → 再委託 → 再々委託)
委託の構造
国土交通大臣(運輸支局長)→(委託)→ 都道府県行政書士会(丁種受託者)→(再委託)→ 研修を修了し名簿に登載された会員行政書士(いわゆる「丁種会員」)、という三層構造です。制度としての開始は平成29年(2017年)。それ以前は甲種等からの再委託で行われていた出張封印が、行政書士(会)独自の委託制度として整備されました。
再々委託 — 全国どこでも「車を動かさず」完結
丁種会員である行政書士どうしの間で、封印取付け事務を委託し合える制度です。たとえば「大阪の行政書士が大阪運輸支局で登録 → 新ナンバー・封印・車検証を東京の丁種行政書士へ送付 → 東京側が現地で取付け」という流れが可能になり、車両を一切移動させずに全国どこのナンバー交換でも完結できます。県外販売・ネット販売の多い販売店には特に価値の大きいしくみです。
委託範囲の拡大
制度改正により、登録申請書類の作成とセットでなくても「封印取付けのみ」の受任が可能になり、乙種・丙種の販売車両への取付けに対応できる場面も広がりました。ただし運用は各行政書士会の規程・案件により異なるため、個別の可否は所属会に確認します。
「出張封印」とは
封印の取付けを、運輸支局ではなく自動車の保管場所(自宅の車庫・会社の駐車場など)で行うことです。封印取付け委託要領第4条に「出張封印方式」として明記されています。
丁種会員の行政書士が、依頼者に代わって運輸支局で登録手続を行い、新しいナンバープレートと封印を受領して依頼者の元へ出張。その場で旧ナンバーの取外し → 新ナンバー取付け → 封印(施封)→ 旧ナンバーの返納までを行います。
手続上は、登録申請時などに「出張封印確認書」(封印受託者名・車台番号・返納方法等を記載した書面)を運輸支局に提出して確認を受け、施封後は取り外した旧ナンバーを遅滞なく交付代行者へ返納する——というのが要領上のルールです。
需要と活用例 — どんな場面で使われるか
- 平日に車を持ち込めない — 運輸支局は平日日中のみ。行政書士が平日に手続きを済ませ、土日祝や夜間に出張して交換することも可能です。
- 引越し・名義変更のナンバー放置対策 — 管轄が変わるとナンバー交換+封印が必要ですが、放置されがち(住所変更は法律上15日以内の申請義務)。出張封印はこのコンプライアンス確保の受け皿になります。
- ネットオークション・個人売買・県外販売 — 再々委託により陸送せずに封印まで完結。陸送費・ガソリン代・時間・車両損傷リスクを削減できます。
- ナンバー交換の需要 — 希望番号、図柄入りナンバー(全国版/ご当地/期間限定)、字光式への交換、毀損・盗難による再交付。
- 法人の社用車・リース車両の一括変更 — 本社移転などで、1か所にまとめて複数台の封印が可能です。
- OSSとの組み合わせ — オンライン申請+出張封印で、申請から封印まで一度も運輸支局・警察署に行かない「完全非来局」型のサービスが成立します。
行政側にも、運輸支局窓口の混雑緩和・ユーザー利便の向上(規制改革・ワンストップ化)という狙いがあり、今後も活用が広がる方向の制度です。
できる行政書士の要件と義務
すべての行政書士ができるわけではありません。一般に次の要件を満たし、所属行政書士会の「丁種封印(取付)会員名簿」に登録された者に限られます。
- 所属する都道府県行政書士会の所定の業務研修を修了していること(自動車登録業務に十分精通していると認められること)
- 行政書士賠償責任補償制度(封印取付業務を対象とする特約・付帯保険)に加入していること
- 行政書士会からの再委託(名簿登載)を受けていること
運用上の義務(受託者準則ベースの例)
- 封印は国有財産に準じた厳格管理(施錠できる場所で保管し、封印受払簿に記帳)
- 毎月10日までに前月分の封印取付報告書を運輸支局長へ提出
- 打損・き損した封印の返納、紛失時の報告
- 再々委託時は、行政書士間で受渡し・取付け・報告等を定めた確約書を交わす
封印は「国の管理物」です。紛失は重大事故であり、保管・運搬・記帳ルールの厳守が信用のすべてです。無資格・要件外での取付け(取外し)は絶対にしないでください。
実務フロー(標準形:管轄変更を伴う名義変更+出張封印)
依頼受付・見積り初日
車検証の写しなどで車両を特定し、出張封印の可否を確認します(字光式・特殊ネジ・輸入車などの不可事例は08参照)。総額と日程を提示します。
必要書類の収集・作成書類
譲渡証明書、新旧所有者の印鑑証明書、委任状、車庫証明、税申告書など(移転登録の書類一覧と「自動車登録業務等実施要領」を参照)。
車庫証明の申請・受領警察署
新しい使用の本拠を管轄する警察署で取得します(車庫証明の実務)。
移転登録+出張封印確認書の提出運輸支局
登録申請とあわせて出張封印確認書を提出し、新車検証・新ナンバー・封印を受領します。
自動車税の申告県税事務所
環境性能割・種別割を申告します。
現地で取付け出張先
依頼者の保管場所へ出張し、車台番号の確認 → 旧ナンバー取外し → 新ナンバー取付け → 封印の施封 → 新車検証の引渡し。車台番号の照合は絶対に省略しません。
返納・記帳・報告事後
旧ナンバーを交付代行者へ返納し、封印受払簿へ記帳。月次の取付報告につなげます。
遠隔地の案件は、運輸支局での受領後に「再々委託」で提携先の丁種行政書士へナンバー・封印を送付し、現地側が取付けを実施します。この提携ネットワークを持っているかどうかが、県外案件の対応力を決めます。
対象外・注意点(トラブル防止のために)
| ケース | 扱い・注意点 |
|---|---|
| 軽自動車・二輪車 | 封印制度自体がないため出張封印の対象外(ナンバー変更手続そのものは代行可能) |
| 字光式ナンバー | 電気配線・照明器具の処理を伴うため、対応不可または追加対応となる場合がある(依頼前に確認)。なお図柄入りナンバーに字光式はない |
| ネジの錆・固着、いたずら防止ネジ・特殊ネジ | 現場で施封できない場合がある。車種・年式・ロックボルトの有無を事前確認 |
| 車台番号の確認が困難な車両(一部輸入車など) | 現場で車台番号を照合できなければ施封不可 |
| 乙種・丙種の構成員が販売する車両 | 原則それぞれの受託範囲。丁種で対応可能なケースは広がっているが、会の運用確認が必要 |
| 「封印のみ」の単独受任 | 登録手続とセットが原則という運用の会もある。可否は所属会の規程による |
販売店・依頼者向けにサービスを案内するときは、「対応可能な地域(自会+再々委託の提携範囲)」と「軽自動車・字光式・特殊ネジ等の可否」を最初に明記しておくと、現場での「できませんでした」トラブルを防げます。
費用の考え方
報酬は自由化されており、各行政書士(事務所)が定めます。市場の目安としては、名義変更・住所変更等の登録代行(OSS含む)で1.5万〜3万円程度+出張封印1台あたり1万円前後の加算という例が紹介されています(あくまで一例で、地域・内容により異なります)。
実費として発生するもの
- ナンバープレート交付手数料(地域・種類=ペイント式/字光式/希望番号/図柄入りで異なる)
- 登録手数料(検査登録印紙。令和8年4月改定の早見表)
- 車庫証明手数料(各都道府県の手数料条例)
- 自動車税環境性能割(課税される場合)
- 出張旅費、再々委託時の提携先報酬・送料 など